西門町:伝統と流行が行き交う ショッピングの聖地

西門町:伝統と流行が行き交う ショッピングの聖地

1_fs1▲西門町は、クールな魅力で知られる台北の活気に満ちたショッピング街です。(写真・黃志偉)

西門町は台北駅近くに位置する賑やかでカラフルなショッピングエリアです。MRT空港線で台北駅へ到着した後は、流行と伝統が融合した独特な雰囲気の西門町まで1駅です。

このエリアは台北の渋谷、原宿、タイムズスクエアなど複数の異名があり、それらが示す通り様々なお店や文化が入り混じっています。流行のファッションやスポーツウェア、日本や韓国のポップカルチャー専門店、デパート、タトゥースタジオ、夜市、ストリートパフォーマー、シネマストリートなどはもちろん、台湾の若者に人気のタピオカミルクティーを販売するドリンクスタンド、焼肉、回転寿司、お土産屋もあります。2022年11月、西門町は『タイムアウト』誌が選ぶ、世界で最もクールな51のスポットの1つとして選出されました。しかし、西門町の魅力はそれだけではありません。

西門町は、日本時代に文字通り「西門」のすぐ外側に位置していたことがその名の由来であり、周囲には中華路、康定路、成都路、漢口街といった通りがあります。1930年代に誕生したこの町には、かつて映画館が多数あり、1980年に台北の東区にその地位を譲るまで、台湾のショッピングとエンターテインメントの中心地だったのです。

1990年代にMRTの板南線が完成し、歩行者天国が整備されると、パフォーマンスやライブ、サイン会などが開催され、再び人が集まるようになりました。例えば、『Cosplay決戦西門町』はアニメファンにはおなじみのイベントで、コスプレをした多くの人たちがこのイベントに参加しています。10周年を迎えたこのイベントは、地元のみならずアジア各国の人々をも魅了しています。 

流行の最先端

モダンで前衛的な取り組みが常に行われている西門町は若者だけでなく、観光客にも人気のスポットとなっています。

流行が日々移り変わる西門町には、日本のユニクロやアメリカのスポーツウェアブランドのチャンピオンなど、世界各国のインターナショナルブランドが次々に出店しています。ドン・キホーテの海外ブランド、DON DON DONKI 西門店は、2021年にオープンした同チェーンの台湾一号店で、24時間営業しています。これらの小売店は品揃えが豊富で、楽しいショッピング体験を提供してくれます。

これだけでなく、大衆文化を代表するスポットも数多くあります。

壁アート

アメリカンストリートとして有名な昆明街96巷では、アメリカのアパレルショップや古着屋が数多く並んでいるほか、『スーサイド・スクワッド』など映画やアニメ、バスケットボールを題材とした目を引くストリートアートが描かれています。台北のストリートカルチャーの縮図とも言えるこの場所は、現在では人気の撮影スポットになり、多くのヒップホップシンガーのミュージッククリップなどに登場します。さらに、武昌街二段120巷や峨嵋街103巷のストリートアートも必見です。

2_fs1▲アメリカンストリートを散策して、ストリートアートとそこから伝わる最先端の文化を楽しみましょう。(写真・黃志偉)

タトゥー

西門町で唯一屋根がついている漢中街50巷の通りには、ピアスとタトゥーのお店が並んでいます。ここ最近では、スクーターやヘルメットのペイントサービスも展開していて、個性の表現の幅が広がっています。

映画

西門町にはシネマストリートと呼ばれる通りがあります。元々は1935年に日本が主催した台湾博覧会がきっかけとなり、4つの壮大な劇場が建てられました。今はない中華市場市集は1961年の落成以降、西門町と他の地域を結びつけていました。その後、経済発展に伴い武昌街には次々と劇場が出現。それらはすでに廃館となっていますが、現在ではLUX CINEMA、in89 CINEMAX、SHIN KONG CINEMASといった施設が、シネマストリートの雰囲気を保ち続けています。

流行の発信基地

1990年代になると若者は日本の雑誌やヨーロッパ、アメリカ、香港など海外スターのポスターを目当てに西寧南路に位置する萬年商業ビルにやって来るようになりました。ここは台北の人たちにとって、若かりし頃の思い出が詰まった場所です。現在ではスニーカーや時計、ゲーム、おもちゃなど販売しています。

3_fs2▲万年ビルには様々なトレンド商品が並び、その外観はインフルエンサーのインスタグラム撮影の背景としても人気です。(写真・黃志偉)

特にスニーカーが好きな人にはおすすめのスポットです。各ブランドのセレクションストアが多く並んでいるほか、限定版のスニーカーも販売していて、特にコンバースのスニーカーは種類が豊富です。

他にもスケーターやコスプレイヤー、アニメファン、ストリートダンサーなど多くの人たちが西門町で自身の個性を発揮しています。

伝統とモダンの調和

西門町は日本時代以降、最も栄えたショッピングエリアです。流行を象徴する町並みの至るところで台北の歴史を垣間見ることができ、新旧が融合した独自の多層的な魅力を形成しています。

西門紅楼

1908年に建てられた西門紅楼は西門町のランドマークの1つです。ここは政府が建設した台湾初の公設市場であり、最も保存状態の良い市の記念物の 1つでもあります。

全盛期に紅楼で行われた京劇や中国の伝統話芸の相声、演劇などの公演は、国共内戦で敗れた国民党が台湾にやって来た後に急増した移民に愛され、ホームシックに悩む彼らの心を癒やしました。1963年以降は、白黒の武侠映画、洋画のセカンドラン、台湾の時代劇映画などが紅楼戱院で上映されるようになりました。

しかし、2000年に紅楼に隣接していた十字楼と南北の広場が火災で焼失。その後、復旧作業が行われ紅楼の新たな歴史が幕を開けました。現在の紅楼は、文化やクリエイティブの中心地であり、パフォーマンスや展示スペースなど幅広いジャンルで活用されています。

八角楼の2階には映画館、中央には展示スペースがあり、その名の通り十字架の形をした十字楼には16個の工房とライブハウス「河岸留言」などがあります。また、北広場にはアーティストのためのマーケット、南広場にはオープンカフェや世界的に有名なゲイバーが軒を連ねており、台北のLGBT+フレンドリーの象徴として注目を集めています。

周辺エリアも活気にあふれ、芸術品や工芸品の市場、ライブハウス、屋外ダイニングやバーなど人気のスポットがたくさんあります。そんな見どころの豊富な紅楼は、MRT西門駅6番出口を出てすぐ左側にあります。

4_fs1▲西門紅楼は西門町の人気スポットであり、LGBT+向けのバーが多く集まる場所でもあります。(写真・台北市観光伝播局)

台北天后宮

1746年に建てられた西門の台北天后宮には媽祖が祀られています。成都路にあるこの寺院は、その規模や立地の関係上、通りからは見えにくい位置にありますが、一歩寺院の中に足を踏み入れると、多くの参拝者で溢れていることがわかります。

この寺院は海を渡ってやってきた移民たちによって建立されたもので、将来の不安を抱えていた彼らは線香や神像を持って航海に臨みました。無事、台湾に到着したあとは媽祖の加護に感謝して寺院を建て、徐々に参拝者が増えていきました。その後、取り壊しや移築、火事による焼失を経て、現在の姿に再建されました。寺院の中に安置された貴重な媽祖像は、200年もの歴史があります。

5_fs2▲台北の天后宮は繁華な成都路に位置し、赤い家からはそれほど遠くありません。(写真・黃志偉)

西本願寺

中華路に位置する西本願寺は、かつて浄土真宗本願寺派台湾別院と呼ばれていました。建設された日本時代には台湾最大の日本式仏教寺院でしたが、1975年の火災で寺院は焼失。その後、台北市政府によって参道、輪番所、鐘楼、修身堂が修復され、歴史的な風格を保ったまま新しい姿へと生まれ変わりました。

西本願寺広場に入ると、小高い丘の上に立つ鐘楼がまず目に映ります。その向かいには本格的な日本式建築で建てられた住職の宿舎があります。宿舎の復元後は、文化的・歴史的な展覧会が開催されるようになったほか、日本の歴史の趣を味わえる優雅な茶室「八拾捌茶輪番所」もオープンしました。

6_fs1▲西本願寺は魅力的な写真を撮るのに最適なスポットです。(写真・台北市観光伝播局)

歴史ある飲食店

1世紀にわたる豊かな歴史を持つ西門町では、文化の融合と社会発展の様子を見守ってきた歴史ある飲食店が軒を連ねています。

お店の外観が歴史を感じさせる蜂大咖啡は、日本人によって台湾に伝わったサイフォンで抽出したマンデリンコーヒーを提供しているほか、デザートには西洋風のチーズケーキではなく、緑豆餅のような伝統的な地元のお菓子を組み合わせています。

7_fs1▲蜂大咖啡ではコーヒーに合う伝統的な朝食と、様々な文化の味わいが入り混じった美味しい料理を提供しています。(写真・黃志偉)

戦後、アジア四小龍の中で最初に好景気が訪れた香港は、香港式飲茶の人気で台湾に影響を与えました。かつては一等地だった獅子林商業大楼の10階にある金獅楼もその一つで、古めかしい内装を保ち、さらに店員がカートを引くという現代の香港でも珍しい光景が見られます。

1946年に創業し、現在3代目が経営する美観園では、台湾風にアレンジした日本料理を提供しています。懐石料理のような繊細なアートとは違い、しっかりとした味わいで胃袋をつかむ、独特なスタイルの日本料理を提供しています。

70年前、鉄道が西門各地に敷かれるようになると、中国大陸から移り住んだ人たちは線路沿いに露店を構えました。その大半は中国本土の濃厚な風味が漂うお店で、台北のローカルフードに新たな味覚を加えました。70年以上続く老山東牛肉麺は台北で人気のお店です。ボリュームたっぷりの牛肉は、お腹を満たしつつ地元ならではの素朴な味が体験できます。

これらの老舗は、時代を超えて変わらぬ味を提供するだけでなく、ホスピタリティの高いサービスを続けているからこそ、常連客が何世代にもわたって通い続けているのです。

インスタグラマーの足跡を追う


若者の西門町の楽しみ方は様々ですが、特にSNS映えする写真の撮影が人気です。例えば、西本願寺を訪れると日本旅行をしたような写真が、中山堂の長い廊下だと古い映画のような雰囲気のある写真が撮れます。

シネマストリートもアメリカンストリートも、クリエイティブな写真撮影にはもってこいの場所です。しかし、西門町の最も代表的なシンボルといえば、MRT西門駅6番出口の通りに描かれた巨大な虹「6号彩虹」でしょう。2019年5月、台湾はアジア初の同性婚合法化を実現し、同年9月に6号彩虹は誕生しました。台北のLGBT+コミュニティと男女平等支援の象徴であり、それ以来、台北で最も人気の撮影スポットになっています。
 
8_fs1▲西門町の6番出口に設置されたレインボーの景観は、この町が多様で包括的な場所であることの象徴です。(写真台北市観光伝播局)

意外なスポットという意味では、洛陽駐車場の屋上も話題となりました。ここは何の変哲もない駐車場ですが、カメラのレンズを通すことで独特な雰囲気を持った写真が撮れるのです。周囲の建物の幾何学的なライン、時代の流れを感じさせる看板や手すりは、写真撮影用の整った背景とは違い、ノスタルジックな香港の雰囲気を感じさせてくれます。

西門町の写真関連のアクティビティでもう一つ人気なのが、韓国式プリクラです。このエリアには様々な種類の筐体が設置されており、若者がグループで写真撮影を楽しみます。

9_fs1▲韓国式のプリクラを撮影する様子。友達同士で着飾り、思い出の一枚を撮っています。(写真・陳稚宜)

西門PLAY楽購町

西門町は常に活気に満ちていますが、クリスマスと新年は盛大な盛り上がりを見せます。毎年12月1日から31日まで、台北市政府は地元企業の協賛で「西門PLAY楽購町」というイベントを開催しています。西門町のいたるところにユニークなディスプレイが設置され、来場者は自由に写真を撮ったりSNSにアップロードして喜びを共有することができます。

ポップシンガーやアイドルがゲストで招かれるこのイベントは、存分にお祭り気分を満喫できます。

台北ランタンフェスティバル

2024年の台北ランタンフェスティバルは西門地区が会場となっています。展示エリアは西門、北門、中華路の3つに分かれていて、ランタンは主にMRT北門駅とMRT西門駅の間に設置されています。

10_fs1▲2022年の台北ランタンフェスティバルで披露された作品で、テーマは『自然を探索するランタン』、製作者はオランダのアーティストKarin Janssen。(写真・台北市観光伝播局)

ランタンフェスティバルは2月2日から開催され、公式展示は2月17日から3月3日まで行われます。キュレートを担当するのは、「光のアーティスト」として知られ、世界的にも評価の高い劉治良氏。また、同氏が台湾の切り絵作家やカリグラフィーアーティストとコラボした作品も展示されます。伝統的な中華文化と現代的な都市文化を融合したテクノロジーによる光と音のアートは、独自の音、色、文化が入り混じっている西門にマッチした作品になるでしょう。

11_fs1▲台北ランタンフェスティバルは家族全員で楽しむのに最適です。(写真・台北市観光伝播局)


  曾儀、張萱音、林說俐、許育華、張友彥 
編集 下山敬之
写真 黄志偉、陳稚宜、台北市観光伝播局